🔇 ノイズ設計とPSRR(電源変動耐性)
📘 概要
アナログ回路は、微小な信号を扱うためノイズや電源変動の影響を強く受けます。
本節では、回路・レイアウトの両視点からノイズ対策を整理し、PSRR(Power Supply Rejection Ratio)という代表的な設計指標を中心に解説します。
🧭 ノイズの種類と発生源
ノイズ種別 |
特徴 |
主な発生源 |
熱雑音(熱ノイズ) |
白色ノイズ、温度比例 |
抵抗、トランジスタのチャネル |
1/fノイズ(フリッカ) |
周波数低下に伴い増加 |
MOSトランジスタ(特にPMOS) |
電源ノイズ |
リップルやスパイク |
電源配線、レギュレータの安定度 |
クロストーク |
配線間の誘導結合 |
長い並走線、混載デジタルクロック |
サブストレートノイズ |
基板を通して伝播 |
デジタル→アナログ領域への影響 |
🧪 PSRR(Power Supply Rejection Ratio)
内容 |
説明 |
定義 |
電源変動が出力にどれだけ影響するかの指標(dB単位) |
理想 |
PSRRが高いほど、電源ノイズに強く安定 |
項目 |
PSRR+(正電源側), PSRR−(負電源/GND側)を個別に評価 |
計算式 |
PSRR = 20 × log10(ΔVDD / ΔVOUT) |
⚙️ 対策例(回路側)
- カスコード構成:出力インピーダンスを高め、電源からの変動を遮断
- 負帰還回路:出力を安定化しノイズ耐性を向上
- 差動構成:共通モードノイズに対して自己キャンセル効果
🧱 対策例(レイアウト側)
対策 |
内容 |
アナログ・デジタル電源分離 |
別バス、別レギュレータ、LDO介在 |
ガードリング/ウェル隔離 |
寄生電流経路の遮断、基板ノイズ抑制 |
サブストレートコンタクト密度確保 |
グランド経路の等電位化、防振効果 |
🧰 SPICEシミュレーション指標
- AC解析:PSRR周波数特性
- 過渡解析:電源リップル注入時の出力応答
- ノイズ解析(.noise):熱雑音、1/fノイズのスペクトル評価
🎯 教材的意義
- 「ノイズに弱い=設計が悪い」とならないよう、ノイズ対策は構造理解が重要
- デジタル設計者も、混載環境でのノイズ源と伝播経路を意識すべき
- PSRRという回路性能の“環境耐性”指標を設計段階で考慮する習慣を身につける
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