インク飛翔の可視化・評価技術 / Ink Flight Analysis and Observation
本ドキュメントでは、インクジェットプリントヘッドから吐出されるインク液滴の飛翔状態を観察・評価するための技術・装置・指標を整理します。
波形調整やインク適合性検証において、液滴の初速・飛翔角・分裂挙動・着弾挙動を定量的に把握することは不可欠です。
🧪 1. 評価の主要目的
- 波形パラメータ(電圧・時間・立ち上がり)による吐出応答の変化の観察
- インク種類(粘度/表面張力)による液滴形成挙動の違い
- 液滴初速・角度・サテライト発生の定量化
- ノズル間のばらつき・製造偏差の可視化
- 経時変化(乾燥/劣化)の評価
📷 2. 使用される主な観察装置
装置/技術 |
目的/測定内容 |
備考 |
高速度カメラ(Strobe) |
液滴形成〜分離〜着弾の連続観察 |
繰返し動作による同期観察 |
ストロボ観察系 |
特定タイミングの静止観察(トリガ同期) |
高繰返し精度が必要 |
CCD+照明系 |
全体形状/初速/飛翔方向の確認 |
サイドビュー型が多い |
波形ジェネレータ |
駆動電圧・パルス制御 |
±40V程度、多ch制御可能 |
モーション解析ソフト |
液滴分裂・加速度・サテライト追跡 |
Particle Tracking対応可 |
🧾 3. 観察指標とパラメータ
指標項目 |
単位例 |
意味 |
液滴初速(Vd) |
m/s |
吐出直後の液滴速度(例:3〜7 m/s) |
飛翔角(θ) |
deg |
ノズル正面からの偏向角 |
サテライト数 |
count |
主液滴から分離した副滴の数 |
タイミング遅延(Td) |
µs |
波形印加から吐出までの遅れ |
ノズル間ばらつき(Δ) |
% |
吐出量または方向の相対ばらつき |
🧠 4. 典型的な問題例と観察所見
観察現象 |
技術的要因例 |
対応策 |
液滴分裂(サテライト) |
波形立上りが急すぎる/粘度不足 |
プリパルス追加/波形緩和 |
飛翔角のばらつき |
ノズル加工誤差/流路汚れ |
ノズル検査/クリーニング工程 |
吐出遅延・不吐出 |
インク粘性変化/電圧不足 |
ヒーター加温/電圧再設計 |
🛠 関連評価と連携
📚 参考資料
- EPSON, Fujifilm, Ricoh 技術ガイド(非公開含む観察記録)
- 実験論文:J. Imaging Sci., Japanese Journal of Applied Physics
- 高速度カメラメーカー(Photron, Keyence等)資料