インク種類と方式別適合性 / Ink Types and Compatibility by Drive Method
本ドキュメントでは、インクジェットプリントヘッドで使用されるインクの種類を整理し、それぞれの物理的特性/硬化方式/駆動方式との適合性を技術的に解説します。
また、メーカーごとの採用傾向や代表製品についても記載します。
💧 1. インクの主要分類
種類 |
主成分 |
乾燥/硬化方式 |
特徴 |
主な用途 |
染料水性 |
水+染料 |
吸収/蒸発乾燥 |
発色性良/耐候性やや弱/コスト低 |
オフィス/家庭用 |
顔料水性 |
水+顔料粒子 |
同上 |
耐候性・耐水性高/ノズル詰まりやすい |
写真/商業印刷 |
油性(溶剤) |
有機溶剤 |
蒸発乾燥 |
速乾/耐久性◎/臭気あり/溶解力高 |
屋外看板/産業印刷 |
UV硬化型 |
モノマー+光重合 |
UVランプ照射 |
非吸収媒体可/即硬化/高密着性 |
ラベル/産業パネル |
熱可塑樹脂 |
ワックス等 |
冷却固化 |
立体印刷可/特種用途 |
テキスタイル/3D印刷 |
⚙ 2. 駆動方式との適合性
インク種類 |
サーマル方式(Thermal) |
ピエゾ方式(Piezo) |
コメント |
染料水性 |
◎ 安定動作 |
◎ ほぼ全方式対応 |
両方式で広く使用可能 |
顔料水性 |
△ 粒子が熱で不安定 |
◎ 吐出可(粒子径に注意) |
サーマルでは詰まりやすい |
溶剤系 |
× 発火リスク・腐食あり |
◎ 耐薬品設計により使用可 |
ピエゾの材料耐性が鍵 |
UV硬化型 |
× ヒーター破損・硬化不可 |
◎ 非加熱・高精度吐出が可能 |
UV対応PZT設計が必要 |
熱可塑ワックス |
× 熱源と干渉 |
△ 高温対応ピエゾなら可 |
高温吐出設計が条件 |
🏭 3. メーカー別採用傾向(代表製品)
メーカー |
採用インク種類 |
採用理由・設計方針 |
EPSON |
染料/顔料/UV |
μTFPの耐インク設計により多様な液体対応 |
Canon |
染料水性中心 |
サーマル方式。染料安定性と発色性に最適化 |
HP |
染料/顔料(水性) |
使い捨てTIJでコストと安定性を両立 |
Ricoh |
UV/顔料水性 |
高耐久ヘッドで産業向けUVも広く対応 |
Fujifilm |
UVインク中心 |
高精度MEMSピエゾとUVランプシステムの統合 |
Konica Minolta |
顔料/溶剤 |
テキスタイル・ラベル用に強靭な材料対応 |
🧠 4. インク選定における設計要件
- 粘度/表面張力の調整:インク吐出性能(20〜10 mPa·s が一般的)
- 化学安定性:加熱・電極腐食・ゲル化への耐性
- 乾燥特性:基材への浸透/硬化速度/耐擦過性とのバランス
- 粒子径管理:ピエゾノズルでは粒径1μm以下が一般目安
📌 参考図(追加予定)
- Mermaid.js による「インク種類 vs 駆動方式 vs メーカー」マトリクス図
- 粘度–温度グラフ、UV硬化プロファイル例
📚 参考資料
- 日本画像学会誌:インクジェット特集号
- FujiFilm Dimatix Technical Guides
- EPSON 技術カタログ/環境対応インク特許(JP2020-xxxxxx)