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1.3 GAA構造:完全ゲート包囲による短チャネル制御の極限へ

概要

GAA(Gate-All-Around)Multi-Nanosheet FETは、FinFETの後継として開発された全ゲート包囲型のトランジスタである。チャネルとなるナノシート(Nanosheet)を完全に包み込むようにゲートが形成されるため、より優れた電界制御性短チャネル耐性を実現できる。

本節では、GAAの構造原理、製造特徴、およびFinFETとの相違点を解説する。


1.3.1 GAA Multi-Nanosheet FETの構造原理

💡 GAAは、構造上、FinFETと比べてより高密度・高制御のデバイススケーリングが可能。


1.3.2 FinFETとの相違点

比較項目 FinFET GAA
ゲート包囲面 3面(両側+上面) 4面(完全包囲)
チャネル構造 Fin(縦構造) Nanosheet(横積層構造)
短チャネル制御 良好(DIBL ~70 mV/V) 優秀(DIBL ~50 mV/V以下)
オフリーク電流 数nA/µm より低い(完全ゲート支配)
ゲート容量 大きめ(3面接触) 更に大(4面接触+多層構造)

1.3.3 GAAの製造プロセス上の特徴

🔍 詳細な工程は appendixf1_02_gaaflow.md を参照のこと。


1.3.4 設計への影響とPDKの注意点


1.3.5 今後の展望

観点 GAA構造の可能性
スケーリング限界 FinFETより小さなLch(例:10nm未満)に対応可能
CFET構造との融合 N型とP型のナノシートを上下に重ねるVertical CFETへ発展中
3D-IC対応性 薄型・高密度構造により3D実装との親和性が高い

図版(予定)


まとめ

GAA Multi-Nanosheet FETは、FinFETが持つ制御性とスケーリング限界を更に押し広げる構造であり、2nm以降の世代で標準的に導入されつつある。設計自由度や寄生要素管理、製造困難性は高いものの、完全ゲート包囲による特性の優位性が今後のSoC設計の鍵を握る。

次節では、FinFETとGAAを設計・物理・電気的観点から比較する。