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1.1 プレーナMOSの限界と微細化の壁

概要

従来のCMOSロジックにおいて広く用いられてきたプレーナ型MOSFETは、40nm以前のノードにおいて優れた性能と製造効率を誇っていた。しかし微細化が進むにつれ、以下のようなスケーリング限界が顕在化し始めた:

この節では、これらの課題を明らかにし、FinFETやGAAへと進化する技術的背景を整理する。


1.1.1 プレーナMOS構造の基本

🧠 しかし、チャネル長が30nm以下になると、ゲートが電界的にチャネルを制御しきれなくなる


1.1.2 微細化とともに発生する問題

課題 内容
短チャネル効果(SCE) ゲート制御が弱まり、電流リーク・スイッチング特性悪化
DIBL(Drain-Induced Barrier Lowering) ドレイン電圧によりしきい値が下がり、誤動作リスクが増加
サブスレッショルド特性の悪化 SS(Subthreshold Slope)が80〜100 mV/decに増加
リーク電流の増加 オフ状態でも電流が流れ、消費電力が増加
バルク効果と寄生容量 高速動作時に信号遅延や電源ノイズが増大

1.1.3 プロセス面での苦肉の対応策

⚠️ これらは一時的な解決策にすぎず、根本的な構造限界は解消されない


1.1.4 設計上の限界


1.1.5 構造的ブレイクスルーの必要性

対応技術 特徴
FinFET ゲートの3面包囲によるSCE抑制、22nm世代で導入
GAA FET ゲートの4面包囲による完全制御、2nm以降で本格化
CFET・VTFET 垂直統合によるさらなる集積化・低消費電力化

図版リンク(予定)


まとめ

プレーナMOS構造は、半導体技術の黄金時代を支えてきた基本構造であった。しかし20nmを下回るノードでは、その物理的限界が顕在化し、構造の転換(FinFET、GAA)が避けられない状況となった。本節の内容は、これ以降の節(FinFET、GAA)の背景理解として基盤となるものである。