従来のCMOSロジックにおいて広く用いられてきたプレーナ型MOSFETは、40nm以前のノードにおいて優れた性能と製造効率を誇っていた。しかし微細化が進むにつれ、以下のようなスケーリング限界が顕在化し始めた:
この節では、これらの課題を明らかにし、FinFETやGAAへと進化する技術的背景を整理する。
🧠 しかし、チャネル長が30nm以下になると、ゲートが電界的にチャネルを制御しきれなくなる
課題 | 内容 |
---|---|
短チャネル効果(SCE) | ゲート制御が弱まり、電流リーク・スイッチング特性悪化 |
DIBL(Drain-Induced Barrier Lowering) | ドレイン電圧によりしきい値が下がり、誤動作リスクが増加 |
サブスレッショルド特性の悪化 | SS(Subthreshold Slope)が80〜100 mV/decに増加 |
リーク電流の増加 | オフ状態でも電流が流れ、消費電力が増加 |
バルク効果と寄生容量 | 高速動作時に信号遅延や電源ノイズが増大 |
⚠️ これらは一時的な解決策にすぎず、根本的な構造限界は解消されない
対応技術 | 特徴 |
---|---|
FinFET | ゲートの3面包囲によるSCE抑制、22nm世代で導入 |
GAA FET | ゲートの4面包囲による完全制御、2nm以降で本格化 |
CFET・VTFET | 垂直統合によるさらなる集積化・低消費電力化 |
images/planar_scaling_limit.png
:プレーナMOSの限界を示す概念図images/sce_effect.png
:短チャネル効果によるバリア低下の模式図images/gate_control_comparison.png
:ゲート包囲面の比較図(Planar vs FinFET vs GAA)プレーナMOS構造は、半導体技術の黄金時代を支えてきた基本構造であった。しかし20nmを下回るノードでは、その物理的限界が顕在化し、構造の転換(FinFET、GAA)が避けられない状況となった。本節の内容は、これ以降の節(FinFET、GAA)の背景理解として基盤となるものである。