この節では、Verilogで記述された設計を物理チップとして実現するための一連のステップを、OpenLaneを使って実行する手順とともに解説します。RTL(論理設計)からGDS(製造データ)への変換には、多くの中間工程が存在しますが、それぞれに意味があり、設計者が理解しておくべき要点があります。
OpenLaneは、Sky130プロセスを前提としたオープンソースの物理設計フロー自動化ツールです。以下の工程を統合的にサポートします:
すべてをMakefileやスクリプトを通じて自動化可能であり、教育用途にも優れています。
物理設計の典型的なステップは以下の通りです:
各ブロックのRTLを配置したディレクトリ(例:designs/fsm/
)に、以下のファイルが必要です:
config.tcl
:フロー全体の設定design.v
:Verilog RTLsdc.tcl
:タイミング制約ファイルMakefile
:実行指示cd OpenLane/
make DESIGN=fsm
実行後、runs/fsm/
以下に結果が格納されます。
results/placement/final.def
:配置後の構成results/routing/final.gds
:GDSファイルreports/
:DRC, LVS, 面積, タイミングなどの結果GTKWaveやKLayoutで波形やレイアウトを確認することができます。
config.tcl
にて以下を設定:
set ::env(DESIGN_NAME)
)Makefile
ではターゲットとして synthesis
, floorplan
, routing
などを個別実行可能物理設計は「見えない論理」から「形のあるチップ」を生成する工程です。OpenLaneはその過程を明示的に可視化し、試行錯誤を通じて設計理解を深めるための優れた教材環境です。
次節 4.6 では、OpenLaneを通じて得られた結果(レイアウト図、タイミングレポート、DRC状況など)を確認・比較し、設計改善のヒントを考察します。