Edusemi-v4x

5.1 SoC設計全体フローと開発視点

SoC(System on Chip)は、複数の機能ブロックを一つのチップ上に集積した大規模集積回路であり、
その設計には論理設計・物理設計・検証・テスト・製造までを含む多段階のプロセスが必要です。

本節では、SoC設計の全体フローを上流から下流まで俯瞰し、
それぞれの工程が何を目的とし、どのようなツールとデータを使うかを整理します。


🗺️ SoC設計の全体フロー(概要図)

    仕様策定
        ↓
    RTL設計(Verilog / VHDL)
        ↓
    論理合成(Logic Synthesis)
        ↓
    ゲートレベルネットリスト生成
        ↓
    配置(Placement)と配線(Routing)
        ↓
    タイミング解析(STA)
        ↓
    検証(LVS, DRC, シミュレーション)
        ↓
    GDS出力 → マスク生成 → 製造

各段階において、EDA(Electronic Design Automation)ツールが用いられます


🔧 工程別の概要と関係性

工程 主な目的 主な出力 使用ツール例
RTL設計 機能記述(Verilog等) RTLコード SystemVerilog, Vivado
論理合成 セルへの変換 ゲートネットリスト Yosys, Design Compiler
配置・配線 物理的なチップ配置 レイアウト情報 OpenROAD, Innovus
タイミング解析 時間的な整合性確認 STAレポート OpenSTA, PrimeTime
検証 配線/素子の整合性確認 DRC/LVSレポート Magic, Calibre
テスト挿入 スキャン/DFT構造の追加 テストパターン Tessent, OpenDFT
GDS出力 製造データ作成 GDSIIファイル KLayout, Klayout

🧠 開発視点の分業構造

SoC設計は、通常以下のような専門分担制で進められます:

教育的には、この分業構造を理解したうえで、一貫した体験的演習が効果的


🎓 教育的導入の観点

観点 解説
ツールの役割理解 各ツールが「設計→検証→製造」へどうつながるかを体感
データフローの明確化 RTL→Netlist→Layout→GDSの流れを可視化する演習
分業と連携の重要性 セル設計・STA・テスト挿入などの接続点に注目

🧭 次節への導入

次節では、SoC設計の出発点となる「標準セル」について掘り下げ、
論理合成や配置配線の基本構成要素としての役割を解説します。

👉 5.2 標準セルとセルベース設計