2.4 マルチプレクサとセレクタの構成と応用
本節では、論理回路において非常に重要な構成要素である マルチプレクサ(MUX) と
セレクタ(セレクタ回路/デコーダ) について学びます。
- MUX:複数のデータ入力から1つを選択して出力する回路
- セレクタ:入力制御に応じて1つの出力を High にする回路
🔹 マルチプレクサ(MUX)の基本
▶ 2:1 MUX(2入力1出力)
- データ入力:A, B
- セレクト信号:S
- 出力:S=0ならA、S=1ならBを出力
論理式:
\[Y = \overline{S} \cdot A + S \cdot B\]
真理値表:
S |
A |
B |
Y |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
1 |
図2.4-1:2:1 MUX の回路記号と構成図

🔹 MUXの拡張:4:1 MUX
- データ入力:A, B, C, D
- 制御入力: $S_1$ , $S_0$(2ビット)
- 出力:
- $Y = A$ (if 00)
- $Y = B$ (if 01)
- $Y = C$ (if 10)
- $Y = D$ (if 11)
図2.4-2:4:1 MUX の構成図

🔹 セレクタ(デコーダ)の基本構成
▶ 2→4 デコーダの例
- 入力: $A_1$ , $A_0$(2ビット)
- 出力: $Y_0$ ~ $Y_3$(そのうち1本だけが “1” になる)
出力論理式の例:
\[\begin{aligned}
Y_0 &= \overline{A_1} \cdot \overline{A_0} \\
Y_1 &= \overline{A_1} \cdot A_0 \\
Y_2 &= A_1 \cdot \overline{A_0} \\
Y_3 &= A_1 \cdot A_0
\end{aligned}\]
図2.4-3:2→4 デコーダの構成と真理値表

🔹 MUXとセレクタの応用例
用途 |
MUX(マルチプレクサ) |
セレクタ(デコーダ) |
演算処理 |
条件分岐、データ選択 |
状態遷移の判定 |
メモリ制御 |
バスの切替 |
アドレス指定 |
設計最適化 |
条件に応じた論理合成 |
イネーブル信号の生成 |
- MUX:複数の AND + OR によって実現
- セレクタ:複数の AND + NOT の合成によって実現
✅ まとめ
- MUXとセレクタは、選択機能を担う基本回路
- 記述間の組み合わせも論理として、論理式 ⇔ 回路図の相互変換が可能
- 次節では、これらを活用した 加算器(Half/Full Adder) の構成を学ぶ
📎 次節:2.5_half_full_adder.md