【Inkjet】🧪 03. GF180MCU × OpenLane が成立しない理由を実機検証で確定させた
topics: [“semiconductor”, “openlane”, “pdk”, “gf180”, “vlsi”, “mixed-signal”, “high-voltage”, “layout”]
📌 結論(先に)
GF180MCU Open PDK は OpenLane(OpenPDK 前提フロー)に非対応であり、
自動合成 → P&R → GDS 生成は成立しない。
これは推測ではなく、実環境での検証結果である。
そして本検証の結果として、
本プロジェクトは 自動デジタルフローを放棄し、
高耐圧 MOS(HVMOS)を中心としたレイアウト主導設計へ移行した。
🧭 背景
GF180MCU は、高電圧デバイスや mixed-signal 設計に適した
Open PDK として公開されている。
インクジェット・プリントヘッドドライバのような
HV + mixed-signal 回路との親和性も高く、
「OpenLane で GDS まで行けるのでは?」
という仮説を立て、実機環境で検証を行った。
🖥 検証環境(要点)
- OS: Ubuntu(WSL)
- Flow: OpenLane v0.23
- PDK: GF180MCU Open PDK
- 目的: 自動フローによる GDS 生成可否の確認
❗ 何が起きたか(事実)
OpenLane 実行時、prep 段階で必ず以下のエラーが発生した。
couldn't read file
.../libs.tech/openlane/config.tcl
🧠 技術的な原因
OpenLane は OpenPDK 形式を前提としており、
以下のディレクトリ構造を必須とする。
libs.tech/openlane/config.tcl
しかし、GF180MCU Open PDK にはこの構造が存在しない。
これは単なる設定不足ではなく、
PDK 設計思想そのものの違いによる。
📊 技術的整理
| 項目 | Sky130 | GF180MCU |
|---|---|---|
| OpenLane公式対応 | ✔ | ✘ |
| OpenPDK構造 | ✔ | ✘ |
| 自動GDS生成 | ✔ | ✘ |
| HV / Mixed-signal適性 | △ | ✔ |
つまり、
GF180MCU が使えないのではなく、
OpenLane の前提と噛み合っていない
という結論になる。
🔍 なぜこれは「失敗」ではないか
本検証で確定した事実は以下。
- GF180MCU は デジタル自動P&R向け PDK ではない
- HV / mixed-signal 回路は レイアウト主導設計が前提
- OpenLane は OpenPDK前提のデジタル特化フロー
これは設計判断として 極めて重要な境界線であり、
資料だけでは分からない点を 実機で確定させた。
🚧 検証の次に行ったこと(重要)
自動フローを諦めた後、本プロジェクトでは次の段階に進んだ。
- OpenLane を完全に切り離し
- KLayout を用いた手動/半自動レイアウト
- 高耐圧 MOS(HVMOS)を最小単位とする
GDS レベルの設計探索
その結果、
高耐圧 MOS スイッチ単位(HV_SW_UNIT)の GDS を実際に生成するに至った。
🧩 HVMOS レイアウト成果(実GDS)
以下は、本プロジェクトで生成した
GF180MCU ベース高耐圧 MOS スイッチユニット(HV_SW_UNIT)の GDSである。
- DNWELL による高耐圧アイソレーション
- 連続した P+ ガードリング
- HVMOS を中心とした最小スイッチ構造
- IC が外界(MEMS/アクチュエータ)に提示する
物理インタフェースの実体

この時点で、
「OpenLane で GDS が出なかった」
ではなく
「適切な設計手法を選び直した結果、
実GDSに到達した」
という状態になっている。
🛠 実務的な示唆
GF180MCU を使う場合
- Magic / KLayout を用いた 手動・半手動レイアウト
- 回路とレイアウトを同時に考える設計
- 高電圧・基板・ガードリングを含めた物理思考
OpenLane を使う場合
- Sky130 などの OpenPDK対応プロセス
- デジタル主体の自動P&Rフロー
「HV mixed-signal × 自動デジタルフロー」は基本的に交わらない
🧩 本プロジェクトとの関係
本検証およびその後のレイアウト成果は、
以下の技術探索プロジェクトの一部である。
gf180-inkjet-driver
- 目的: インクジェット・プリントヘッド向け
高電圧 mixed-signal ドライバ IC の物理設計探索 - 方針: 自動化ではなく レイアウト主導設計
🔗 Links
-
GitHub Repository
https://github.com/Samizo-AITL/gf180-inkjet-driver -
GitHub Pages(設計ドキュメント)
https://samizo-aitl.github.io/gf180-inkjet-driver/ -
Design Docs(GDS / Layout中心)
https://samizo-aitl.github.io/gf180-inkjet-driver/docs/
🧾 まとめ
GF180MCU × OpenLane は成立しない。
これは失敗ではなく、設計フロー選定における重要な検証結果である。
GF180MCU は
「自動化のためのPDK」ではなく、
“人がレイアウトする前提”の PDKである。
そして、その前提に立てば、
HVMOS を中心とした実GDSに到達できることも、
本検証で示された。
📎 付記
同様の誤解で時間を消費する設計者が
一人でも減ることを願っている。