【Inkjet】🖨️ 02. inkjet-timing:圧電インクジェットにおける時間因果の可視化
topics: [“inkjet”, “制御工学”, “物理モデリング”, “可視化”, “aitl”]
📌 はじめに
圧電インクジェットは、一見すると「波形を与えて液滴が出る」だけの
単純なシステムに見えます。
しかし実際には、
- 電気(V–I)
- 機械(変位)
- 流体(圧力・流量)
という 異なる物理ドメインが、マイクロ秒オーダの時間軸で因果的に連結
されたシステムです。
本記事では、その時間因果を直感的に理解するための可視化プロジェクト
inkjet-timing を紹介します。
🧩 inkjet-timing とは
inkjet-timing は、圧電インクジェット吐出における
「同一時間軸上で、電気・機械・流体がどう因果接続されているか」
を 定性的に可視化するための教材/PoC です。
数値精度や CFD の再現ではなく、
- 時間順序
- 遅延
- 位相関係
- 因果の流れ
に焦点を当てています。
📊 何を可視化しているか
1 本の時間軸を共有し、以下の信号を縦方向に積層表示します。
- 駆動電圧 V(t)
- 電流応答 I(t)
- 圧電変位 Δx(t)
- チャネル圧力 P(t)
- インク流量 Q(t)(流出/流入)
各波形は異なる物理ドメインに属しますが、
すべて時間因果で結ばれています。
重要なのは「値」ではなく
どの現象が、どの順序で立ち上がるかです。
🧠 なぜ PID 制御ではないのか
インクジェット吐出は、
- 完全にオープンループ
- フィードフォワード駆動
- 数マイクロ秒以内に完結
という性質を持ちます。
液滴形成中にフィードバック制御を回す時間はありません。
安定性は、
- 駆動波形設計
- 機械減衰
- 音響・流体系構造
によって 物理的に埋め込まれます。
これは PID 制御とは カテゴリが異なる制御問題 です。
🧭 設計思想(Design Intent)
この可視化は、次の前提で設計されています。
- CFD ではない(定性的)
- パラメータ厳密性より因果構造を重視
- 過減衰で正常動作する系を表現
目的は数値予測ではなく、
「このタイミングで、なぜこの現象が起きるのか」
を即座に理解できる 物理直感の獲得です。
📐 可視化の読み方
- 横軸:時間(μs スケール)
- 縦軸:物理ドメイン(上から 電気 → 機械 → 流体)
- 1 本の時間カーソルが全ドメインを貫通
- 各ドメインの点が「その瞬間の状態」を示す
オシロスコープやロジックアナライザを
物理ドメイン横断で拡張した表示
と考えると理解しやすいです。
🔗 Live Demo(GitHub Pages)
ブラウザ上で動作するインタラクティブデモを公開しています。
👉 https://samizo-aitl.github.io/inkjet-timing/index.html
- インストール不要
- 完全ブラウザ実行
- ゲインやタイミングを操作可能
- 教育・説明・レビュー用途を想定
🧩 AITL における位置付け
AITL(Architecture-Integrated Thinking Loop)では、
- PID:実時間フィードバック制御
- FSM:状態遷移の管理
- 物理設計:安定性の埋め込み
を役割分担させます。
inkjet-timing は、
- 振る舞いが構造と時間で決まる
- 安定性が物理に内在する
- 因果関係を一望する必要がある
システムの代表例です。
インクジェット波形設計は
「物理制約付きフィードフォワード制御問題」
として捉えることができます。
📜 ライセンス
コード
HTML / JavaScript / CSS を含むソースコードは
MIT License で公開しています。
概念モデル・解説
物理解釈・因果構造・設計思想は
教育・研究目的で提供しています。
概念モデルや設計方法論を再利用する場合は
適切なクレジット表記をお願いします。
📝 おわりに
本プロジェクトは意図的に単純化されています。
これは、
- 詳細シミュレーションの代替
- 実機最適化ツール
ではありません。
しかし、
「時間と因果を正しく見る」
という一点においては、
インクジェット設計の理解を大きく前進させると考えています。
GitHub Repository
https://github.com/Samizo-AITL/inkjet-timing