【MEMS】🧠 03. ROMで作る mems-ana_core の数式構造と設計ポリシー
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📌 はじめに
前回の記事(402)では、
圧電ヒステリシス入力に対する MEMS 構造の挙動 を
可視化デモとして眺めました。
本記事では、その裏側にある
mems-ana_core の数式構造と設計ポリシー を整理します。
本稿の目的は、
- 実装コードの逐語解説
- 厳密な物理再現
ではなく、
なぜこの数式構造にしているのか
どこまでをモデルに含め、どこを切っているのか
を 設計者の視点で明確化すること です。
※ 本記事は mems-ana シリーズ第3回です。
🧩 mems-ana_core の立ち位置
mems-ana_core は、
- mems-ana の中核計算部
- ROM(Reduced Order Model)の実装体
に相当します。
特徴は次の3点です。
- 支配モードを明示的に仮定
- 物理量と数式の対応が追える
- 校正パラメータの意味が限定的
「速く回す」ことよりも、
構造が読めること を優先しています。
🧱 モデル化の前提
対象としているのは、典型的な
- 薄膜 MEMS 構造
- 矩形ダイアフラム
- 小変形・準静的応答
です。
したがって、
- 幾何学的非線形
- 大変形
- 局所塑性
は モデル外 とします。
この前提を崩す場合、
mems-ana_core を使うべきではありません。
📐 ROM(Reduced Order Model)の基本形
変位場 $u(x,y,t)$ は、
空間モード $\phi_n(x,y)$ と
時間係数 $q_n(t)$ の積で表します。
ここで重要なのは、
- $N$ を 意図的に小さくする
- 物理的に意味のあるモードのみを選ぶ
という点です。
mems-ana_core では、
- 対称性
- 支配モード
- 境界条件
を考慮し、
最小限のモード数 で構成します。
⚙️ 運動方程式の構造
ROM による一般形は、次の形になります。
\[M \ddot{\mathbf{q}} + C \dot{\mathbf{q}} + K \mathbf{q} = \mathbf{f}(t)\]ここで、
- $\mathbf{q}$ :モード係数ベクトル
- $M$:質量行列
- $C$:減衰行列
- $K$:剛性行列
です。
mems-ana_core では、
- 動的解析よりも
- 準静的・低周波応答
を主に想定しているため、
$\ddot{\mathbf{q}}$ や $\dot{\mathbf{q}}$ を
省略・簡略化するケースもあります。
⚡ 圧電駆動項の扱い
圧電駆動は、
**外力項 $\mathbf{f}(t)$ ** として導入します。
重要なのは、
- 圧電定数 $d_{33}$ を
「実効的な比例係数」として扱う - 電界分布の厳密解を追わない
という割り切りです。
その結果、
- 電圧 → 分極 → 等価外力
という 設計用の因果関係 を
シンプルに保っています。
🔁 ヒステリシス入力の位置付け
02 で用いた P–Ez ヒステリシス は、
- 材料モデルの厳密再現
ではなく、
- 入力波形の非線形性の代表
として導入しています。
つまり mems-ana_core は、
- ヒステリシスを「内部状態」として解く
のではなく、
- 外から与えられる履歴依存入力
として扱います。
この割り切りにより、
- 数式構造の複雑化を防ぎ
- ROM の透明性を維持
しています。
🎯 校正(キャリブレーション)の考え方
mems-ana_core における校正は、
- FEM 結果
- 実測データ
の どちらにも対応可能 ですが、
目的は一貫しています。
パラメータに「意味」を持たせたまま
数値を合わせる
具体的には、
- 剛性スケール
- 有効圧電係数
- 減衰係数
などを 限定的に調整 します。
「何でも合わせる」ことはしません。
🔗 FEM との関係(再確認)
mems-ana_core は FEM の代替ではありません。
- FEM:
- 局所応力
- 複雑形状
- 高次モード
- mems-ana_core:
- 全体挙動
- 感度
- 設計思考
という 役割分担 を前提にしています。
FEM 結果を
「なぜそうなったか考えるための補助線」
として使う位置付けです。
🗂 GitHub リポジトリ
本記事で解説した mems-ana_core を含む
実装コードは、以下の GitHub リポジトリで公開しています。
https://github.com/Samizo-AITL/mems-ana
数式とコードの対応関係は、
リポジトリ内のスクリプトを参照してください。
🧭 シリーズまとめ
- 01:設計思想と全体像
- 02:可視化デモ(挙動を眺める)
- 03:ROM 数式構造と設計ポリシー(本記事)
この3本で、
- 考え方
- 挙動
- 数理
を 一貫した流れ として提示しました。
📝 おわりに
mems-ana_core は、
精密解を出すためのモデル
ではなく、
設計者が考えるためのモデル
として設計しています。
数式を減らすことよりも、
意味を減らさないこと を優先しました。
ROM は「近似」ですが、
良い近似は思考を加速します。
本記事が、
MEMS 設計におけるモデル化の考え方を
整理する一助になれば幸いです。