topics: [“制御工学”, “PID”, “ロバスト制御”, “信頼性”, “AITL”]
制御工学は長らく、次の問いを中心に発展してきた。
「不確かさに対して、安定か?」
H∞制御、μ解析、ロバスト PID、ゲイン余裕・位相余裕。
これらはすべて Robust Control という設計思想に基づいている。
しかし実システムを長期間運用していると、次のような状況に直面する。
ここで問うべきは、単なる安定性ではない。
「この制御は、どのくらい信頼して使い続けられるのか?」
本稿では、この問いに対する設計思想として
Reliability Control を提示する。
| 観点 | Robust Control | Reliability Control |
|---|---|---|
| 主目的 | 安定性保証 | 機能継続性 |
| 不確かさ | 想定範囲内で固定 | 時間とともに変化 |
| 故障 | 設計外(例外) | 設計対象 |
| 評価指標 | 安定・性能 | 信頼度・劣化耐性 |
| 時間軸 | 静的 | 動的・履歴依存 |
Robust Control が
「壊れないように強く作る」設計だとすれば、
Reliability Control は
「壊れかけを察知し、使える状態を維持する」設計である。
本稿では、Reliability Control を次のように捉える。
Reliability Control とは、
制御対象・制御器・環境の劣化や変動を前提とし、
機能喪失を回避・遅延・縮退させることを目的とした制御設計思想である。
ここで重要なのは、
という点である。
この Reliability Control の考え方を具体的に検討するため、
筆者は PID × FSM × LLM の三層構造制御アーキテクチャである
AITL Controller A-Type を用いた初期検証を開始している。
👉 AITL Controller A-Type(GitHub Pages)
https://samizo-aitl.github.io/aitl-controller-a-type/
AITL Controller A-Type は、次の三層構造を持つ。
これは、Robust Control を内側に含みつつ、
その外側に Reliability Control の層を構成する試みである。
摩耗・劣化を仮定したモデルに対し、
1000 days 相当の劣化後における制御応答を比較した。
その結果、摩耗劣化 1000 days 後においても、
AITL 制御の方が Initial 波形に対する位相差が小さいという傾向が確認された。
これは、単なる安定性の維持ではなく、
時間経過後も元の振る舞いに近い応答を保とうとする挙動として
解釈できる可能性がある。
ただし、現段階では:
したがって、AITL 制御が Reliability Control として本当に有効であるかどうかは、
まだ結論づけられない。
現時点の結果はあくまで、
Robust Control とは異なる挙動を示す可能性が見え始めた段階
に過ぎない。
今後は以下の観点で検証を進める予定である。
これらを通じて、
AITL 制御が Reliability Control として意味を持つのかを検証していく。
Robust Control は否定されるべきものではない。
それは今後も、制御系の内側を支える基盤であり続ける。
その一方で、
制御とは、
壊れる世界で、使い続けるための技術ではないか。
Reliability Control は、
Robust Control を極めた先に立ち上がる設計思想である。
本稿が、その議論の入口になれば幸いである。