topics: [“半導体”, “技術史”, “DRAM”, “信頼性”]
Legacy Technology は、
過去の半導体技術を懐かしむためのアーカイブではない。
これは、半導体デバイスが
物理的制約に正面から支配されていた時代に起きた
失敗と回復の実例を構造として記録したものである。
ソフトウェアやファームウェア、
あるいはシステムレベルの補償によって
問題が「隠せる」ようになる以前。
プロセス統合、セル構造、デバイス物理が
歩留まり・信頼性・事業判断を直接決めていた瞬間が、
ここには残されている。
📌 本記事で扱うアーカイブ全体は、以下に公開している。
https://samizo-aitl.github.io/Edusemi-Plus/archive/legacy/
1990年代半ばまで、日本はDRAM技術において
世界の最先端にあった。
複数の国内メーカーが同時に、
を世界最高水準で成立させており、
競争の主軸は次の点に置かれていた。
密度やコストだけが評価軸ではなかった。
当時のDRAMセル設計は、
本質的に アナログで物理的な問題として扱われていた。
この時代の設計文化には、明確な前提があった。
この文化は、非常に頑健なメモリを生んだ一方で、
次の前提に強く依存していた。
❗ 物理マージンは侵してはならない
この前提が成立している限り、
信頼性は「設計で保証できるもの」だった。
スケーリングが 0.25µm世代以降に入ると、
この前提は徐々に崩れ始める。
| 項目 | 現実 |
|---|---|
| 🧮 セル容量 | 構造的にマージンが崩壊 |
| 💧 リーク・Disturb | 例外ではなく常態に |
| ⏳ Retention | 支配的な制約要因へ |
| 💰 市場圧力 | 物理確実性より速度とコスト |
同時にDRAM価格は長期下落局面に入り、
故障機構を完全に理解する前に量産を進める
という判断が求められた。
Pause、Disturb、Retention loss といった故障は、
もはや仮説ではない。
顕在化する 現実の問題 になった。
ここで扱う技術は、
すでに 20年以上前のものである。
しかし、
失敗の構造は古くなっていない。
現代の半導体システムでも、
同じ因果構造は繰り返し現れる。
変わったのは、
スケール・語彙・抽象化レイヤだけだ。
このアーカイブが焦点を当てるのは、
物理・製造・判断の交点である。
以下は 意図的に扱わない。
各ケースは、次の順で整理されている。
これは後講釈の説明順ではない。
現場で実際に問題が現れ、解かれていった順序である。
Legacy Technology が存在する理由は一つだけだ。
🧱 物理は、技術が進んでも消えない。
無視しやすくなるだけで、
消えたわけではない。
本アーカイブは、
物理を無視できなくなった瞬間を記録している。
📚 Legacy Technology Archive
https://samizo-aitl.github.io/Edusemi-Plus/archive/legacy/
📘 0.25µm DRAM ケース一覧
https://samizo-aitl.github.io/Edusemi-Plus/archive/legacy/dram_025um/
📙 PSRAM(2001)ケース一覧
https://samizo-aitl.github.io/Edusemi-Plus/archive/legacy/psram_2001/
次回から、
0.25µm世代 DRAMで実際に観測された異常に入る。
まずは
「何が起きていたのか」だけを扱う。
原因や解釈は、その後だ。