【半導体】⏱️ 08-08. NBTIとは何か ― MOSFETは時間で劣化する
topics: [“半導体”, “NBTI”, “信頼性”, “MOSFET”, “BSIM4”]
⏱️ はじめに
これまでの記事では、
- 🧪 TCAD による物理理解
- 📐 BSIM4 によるモデル化
- 🔌 SPICE による特性評価
を通して、「作った直後の MOSFET 特性」 を見てきました。
しかし実デバイスでは、
今日よかった特性が、5年後も同じとは限らない
という現実があります。
その代表例が
👉 NBTI(Negative Bias Temperature Instability)
です。
NBTI は、MOSFET が「時間」で壊れていく 現象を理解するための、
最も基本的かつ重要な信頼性問題です。
🔥 NBTIとは何か
NBTI は主に pMOSFET において、
- 負のゲートバイアス
- 高温環境
- 長時間動作
が重なったときに発生する
時間依存の信頼性劣化現象 です。
最大の特徴は:
しきい値電圧 $V_t$ が時間とともに変化する
ことにあります。
🧠 何が起きているのか(物理像)
NBTI ストレス下では、
ゲート酸化膜とシリコン界面付近で:
- 界面準位の生成
- トラップの活性化・固定化
が進行します。
その結果:
- 同じ $V_g$ をかけても
- 同じチャネル電荷が形成されにくくなる
👉 MOSFET が「オンになりにくくなる」
これが、オン電流低下・遅延増大として現れます。
📉 V–I 特性への影響
NBTI の影響は、DC 特性にそのまま現れます。
典型的な変化:
- $V_g$–$I_d$ カーブの 右シフト
- サブスレッショルド特性の劣化
- 同一 $V_g$ における $I_d$ 低下
これらはすべて、
しきい値電圧シフト(ΔVth)
の結果です。
📐 BSIM4 における NBTI の扱い
BSIM4 では、NBTI を次のように捉えます。
- 劣化を モデルパラメータの変化 として表現
- 時間に依存した $V_t$ シフトを想定
- 劣化前後の特性差を比較可能
ただし重要な点として:
BSIM4 単体では「時間発展」を直接計算しない
そのため、SemiDevKit では:
- 🧪 SPICE:t = 0 の正確な測定
- 🧮 Python:t > 0 の劣化モデル
という ハイブリッド構成 を採用しています。
🧰 SemiDevKit による NBTI 解析
使用するモジュール:
- BSIM4 Analyzer Reliability
https://samizo-aitl.github.io/SemiDevKit/bsim/bsim4_analyzer_reliability/
このフレームワークでは:
- 初期 VG–ID 特性の取得
- gmmax 法 / 定電流法による Vth 抽出
- 時間依存劣化モデルの適用
- 劣化後特性の再構築
を 完全自動 で行います。
🔬 NBTI 解析フロー
t = 0
├─ VG–ID sweep
│ ├→ Vtg0(gmmax 法)
│ └→ Vtc0(定電流法)
├─ DC 抽出
│ └→ Idlin0 / Idsat0
t > 0
├─ ΔVth(t) モデル適用
├─ ΔId(t) モデル適用
├─ Vtg1 / Vtc1 / Idlin1 / Idsat1 再構築
→ CSV 出力
→ 劣化プロット生成
→ VG–ID 重ね描き
🚀 実行例
cd bsim/bsim4_analyzer_reliability/run
python run_nbti_pmos.py
📊 解析結果例
■ PMOS NBTI:Vg–Id 劣化(Linear)

👉 Vg–Id カーブが右にシフト
👉 同一ゲート電圧で電流が出なくなる
■ PMOS NBTI:ΔVtg vs Stress Time

👉 劣化は 時間のべき乗則 に従う
👉 初期劣化が特に支配的
⚠️ なぜ NBTI が重要なのか
NBTI は:
- 動作周波数の低下
- タイミングマージンの消失
- 長期信頼性の破綻
を引き起こします。
特に:
- 低電圧動作
- SRAM / 低 Vdd ロジック
- 長寿命製品(車載・産業)
では、無視できない制約条件になります。
🔗 TCAD / BSIM / SPICE の関係
NBTI もまた、これまでと同じ流れの上にあります。
- TCAD:界面で何が起きているか
- BSIM4:劣化をパラメータ化
- SPICE:回路特性への影響を確認
👉 信頼性も「物理 → モデル → 回路」の問題です。
📝 まとめ
- ⏱️ NBTI は時間依存の信頼性劣化現象
- 🟦 主に pMOSFET で問題になる
- 📉 しきい値電圧シフトとして現れる
- 🧪 BSIM4 + SPICE + Python で影響を可視化できる
MOSFET は、
「動くか」ではなく
「何年動き続けるか」
で評価される時代に入っています。
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