【半導体】📐 08-06. BSIM4のAC/CV解析 ― 寄生容量と周波数応答を正しく読む
topics: [“半導体”, “BSIM4”, “SPICE”, “AC解析”, “CV解析”]
🚀 はじめに
前回の記事では DC解析(V–I 特性) を扱いました。
しかし MOSFET は、直流だけで使われるデバイスではありません。
- ⚡ 高速デジタル回路
- 🎛 アナログ回路
- 📡 周波数特性・帯域設計
これらを考えると、
👉 寄生容量と周波数応答の理解は必須 になります。
本記事では、BSIM4 モデルを用いて、
- 📊 AC解析(周波数応答)
- 🧪 CV解析(容量特性)
を整理し、
「何が見えて、何に注意すべきか」 を明確にします。
🧭 AC解析とCV解析の違い
🔹 AC解析とは?
- DC動作点の周りに 微小交流信号 を重ねる
- 周波数を掃引して応答を見る解析
主に分かること:
- 小信号ゲイン
- 位相特性
- 周波数帯域
- トランスコンダクタンス $g_m$
- 出力抵抗 $r_o$
👉 回路が「どれだけ速く応答できるか」 を評価します。
🔹 CV解析とは?
- MOSFET に内在する 容量成分 を評価
- バイアスに対する容量変化を見る解析
対象となる容量:
- ゲート容量 $C_{gg}$
- (参考)$C_{gs}$, $C_{gd}$, $C_{gb}$
👉 遅延・スイッチング速度・高周波特性 に直結します。
🧰 使用する環境(SemiDevKit)
本記事では、以下のツールを使用します。
- BSIM4 C–V Extraction Tool(ngspice)
https://samizo-aitl.github.io/SemiDevKit/bsim/bsim4_analyzer_cv/
前提環境
- BSIM4 モデルカード(教育・解析用)
- ngspice 41(64-bit)
- Python 3.9+
- matplotlib
⚠️ CV解析の考え方(重要)
BSIM4 では、容量は 電荷ベース で定義されています。
物理的に意味を持つ容量
C_{gg} = \frac{dQ_g}{dV_g}
- 全ゲート電荷の微分
- MOS 構造として一意に定義される量
注意:partitioned capacitance の罠
BSIM4 が内部で出力できる:
- $C_{gs}$
- $C_{gd}$
- $C_{gb}$
これらは:
- 電荷分割アルゴリズム依存
- 以下が成り立たないことがある
C_{gs} + C_{gd} + C_{gb} \neq C_{gg}
👉 純粋な C–V 特性としては不適切 な場合があります。
そのため、本ツールでは:
✅ Cgg のみを抽出
❌ Cgs/Cgd/Cgb は評価対象外
としています。
🧪 CV解析の実行方法
python run_cv.py
この処理により:
- NMOS / PMOS
- 温度条件:LT / RT / HT
の 全6条件 を自動生成・実行します。
🧩 NMOS / PMOS の端子条件
🔹 NMOS
- S = D = B = 0V
- ゲート電圧:0 → VDD
🔹 PMOS(重要)
- S = D = B = VDD
- ゲート電圧:VDD → 0V
👉 実デバイスの ON / OFF 振る舞いと一致
👉 PMOS の物理挙動を正しく反映
📈 CV解析の出力例
■ NMOS C–V(130nm, RT)

- 蓄積 → 空乏 → 反転
- U字型の $C_{gg}$–$V_g$ 特性
■ PMOS C–V(130nm, RT)

- VDD → 0V の sweep
- 実際の PMOS 動作と整合
📡 AC解析:周波数応答を見る
python run_ac.py
AC解析では:
- DC動作点を基準に
- 微小交流信号を印加
- 周波数を掃引
することで、
- ゲイン
- 位相
- 帯域幅
を評価します。
👉 DC解析が正しくないと、AC解析も意味を持たない
👉 DC → AC → CV の順序が重要です。
🧠 寄生容量はどこから来るか
MOSFET の寄生容量は:
- ゲート酸化膜
- チャネル形成
- オーバーラップ構造
- 空乏層の広がり
など、TCAD で見える電位・キャリア分布の結果 です。
👉 BSIM4 はそれを コンパクトモデル化 したものに過ぎません。
🔗 DC解析との関係
重要なポイント:
AC / CV 解析は DC 動作点に完全に依存する
- DC が不正 → AC / CV も破綻
- DC が妥当 → 小信号解析が生きる
👉 必ず DC → AC / CV の順で考える
📝 まとめ
- 📊 AC解析:周波数応答を見る
- 🧪 CV解析:寄生容量を評価する
- ⚠️ BSIM4 では Cgg のみが物理的に意味を持つ
- 🧠 DC解析の理解がすべての前提
BSIM4 を「使えるモデル」にするには、
何を見てよくて、何を信じてはいけないか を知ることが重要です。
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07:MOSFETのL/Wスケーリングと短チャネル効果