【半導体】📈 08-05. BSIM4で読むMOSFETのDC特性 ― Vg–Id / Vd–Id解析
topics: [“半導体”, “BSIM4”, “SPICE”, “DC解析”, “MOSFET”]
🧭 はじめに
前回の記事では、Paramus による BSIM4 モデル生成を扱いました。
モデルカードを作成したら、次に必ず行うべき作業があります。
そのモデルが、どのような V–I 特性を示すのかを確認すること
本記事では、BSIM4 MOSFET モデルを用いた DC解析により、
- ゲート電圧掃引: $V_g$ – $I_d$ 特性
- ドレイン電圧掃引: $V_d$ – $I_d$ 特性
を実際に可視化し、
MOSFET の基本動作と モデルパラメータの意味 を整理します。
🔍 DC解析とは何か
DC解析とは、時間変化を考慮せず、定常状態における電圧–電流(V–I)関係を求める解析です。
MOSFET に対しては、主に次の 2 種類を確認します。
- $V_g$ – $I_d$ 特性(転送特性)
- $V_d$ – $I_d$ 特性(出力特性)
これらは、
- デバイス理解
- モデル検証
- 回路設計・評価
すべての出発点となる、最も重要な特性です。
🧰 使用する環境(SemiDevKit)
本記事では、SemiDevKit に含まれる
BSIM4 DC Analyzer を使用します。
🔗 ツールページ
BSIM4_ANALYZER_DC | SemiDevKit
特徴
- BSIM4 モデル × ngspice × Python による 自動 DC解析
- NMOS / PMOS(130nm)対応
- $V_g$ – $I_d$, $V_d$ – $I_d$ の自動プロット
- $V_t$ ・ $g_{m,\max}$ ・ $I_{d,\mathrm{lin}}$ ・ $I_{d,\mathrm{sat}}$ の自動抽出
- 教育用途から 将来の商用解析ツール展開を見据えた設計
前提環境
- BSIM4 モデルカード(Paramus 生成)
- ngspice
- Python 3.10 以上
📉 Vg–Id解析(ゲート電圧掃引)
実行方法
cd bsim/bsim4_analyzer_dc/run
python run_vgid.py
このスクリプトは、以下を自動で実行します。
- SPICE ネットリスト生成
- ngspice 実行
- 数値データ取得
- 線形・対数プロット生成
NMOS:$V_g$ – $I_d$ 特性(例)

横軸:ゲート電圧 $V_g$
縦軸:ドレイン電流 $I_d$
この特性から、次が読み取れます。
- しきい値電圧 $V_t$
- サブスレッショルド領域
- オン電流レベル
- ゲート制御能力( $g_m = \partial I_d / \partial V_g$ )
TCAD で見た「チャネル形成」 が、
ここでは V–I 特性として直接現れます。
PMOS:$V_g$ – $I_d$ 特性

PMOS では SPICE 極性のままプロットされており、
温度変化による $|V_t|$ や移動度変化も確認できます。
📊 Vd–Id解析(ドレイン電圧掃引)
実行方法
cd bsim/bsim4_analyzer_dc/run
python run_vdid.py
NMOS:$V_d$–$I_d$ 特性(例)

横軸:ドレイン電圧 $V_d$
縦軸:ドレイン電流 $I_d$
この特性から、
- 線形領域(低 $V_d$)
- 飽和領域
- チャネル長変調(出力抵抗 $r_o$)
といった MOSFET の動作領域 が明確に読み取れます。
PMOS:$V_d$–$I_d$ 特性

$I_{d,\mathrm{lin}}$ ・ $I_{d,\mathrm{sat}}$ の抽出や、
短チャネル効果の比較にも有効です。
🧠 DC特性と物理モデルの対応
DC解析で得られる V–I 特性は、ブラックボックスではありません。
| DC特性 | 対応する物理要因 |
|---|---|
| $V_t$ | ドーピング、酸化膜厚 |
| オン電流 | 移動度、チャネル長 |
| 飽和特性 | 速度飽和、短チャネル効果 |
これらはすべて、
TCAD → BSIM4 → SPICE
という一貫した流れでつながっています。
🧪 なぜDC解析が重要なのか
DC解析は、単なる特性確認ではなく、
- モデルが破綻していないか
- パラメータが物理的に妥当か
- 異常な温度・電圧依存がないか
を確認する 健全性チェック です。
AC解析・CV解析・信頼性解析は、
DC特性が正しいことが前提条件 になります。
📝 まとめ
- DC解析は MOSFET 理解の基本
- $V_g$ – $I_d$ , $V_d$ – $I_d$ は必ず確認する
- BSIM4 の意味は V–I 特性に直接現れる
- SemiDevKit により解析は自動化できる
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👉 06:BSIM4のAC/CV解析 ― 寄生容量と周波数応答
BSIM4 の理解は、DC解析から始まります。
モデルを見る力は、回路と物理をつなぐ力です。