【半導体】🧠 08-02. TCADで理解するMOSFETの本質 ― Poisson方程式とDrift–Diffusion
topics: [“半導体”, “TCAD”, “MOSFET”, “Poisson方程式”, “DriftDiffusion”]
🧭 はじめに ― V–I特性はどこから来るのか
MOSFET の V–I 特性 は、
回路シミュレーションで突然「与えられる」ものではありません。
その起点は、デバイス内部で起きている
- 電位分布(Electrostatics)
- キャリア輸送(Transport)
という、きわめて物理的な現象です。
本記事では TCAD(Technology Computer-Aided Design) の視点から、
- 🧮 Poisson 方程式(電位を決める)
- 🚗 Drift–Diffusion 方程式(電流を決める)
を軸に、
👉 MOSFET の $V$–$I$ 特性が「なぜそうなるのか」 を整理します。
🔍 TCADとは何か
TCAD は、半導体デバイス内部の物理現象を
数値計算で直接解く シミュレーション手法です。
与えるのは、
- デバイス構造
- ドーピング分布
- 材料定数
- バイアス条件
その結果として、
- 電位分布
- 電界
- キャリア密度
- 電流密度
を 同時に・連続的に 観測できます。
📌 回路シミュレーションが「結果を見る世界」だとすれば、
TCAD は「結果が生まれる瞬間を見る世界」です。
🧮 Poisson方程式 ― 電位がすべての起点
Poisson 方程式は、
電荷分布 → 電位分布
を結び付ける、半導体物理の根幹です。
MOS 構造では、
- ゲート電圧
- 酸化膜厚 $t_{ox}$
- 基板ドーピング $N_A$
が 表面電位 を通じて、チャネル形成を支配します。
つまり、
チャネルができるかどうかは、まず電位で決まる
ということです。
🧱 MOS構造で起きていること(Poissonの役割)
ゲート電圧を上げると、MOS 構造では次の順で変化が起きます。
- ゲート電圧が印加される
- 酸化膜を介して表面電位が変化する
- 表面にキャリアが集まる
- チャネルが形成される
ここまでを 支配しているのが Poisson 方程式 です。
👉 「電位がチャネルを作る」
🚗 Drift–Diffusion方程式 ― 電流を決める
チャネルができただけでは、電流は流れません。
電流を決めるのが Drift–Diffusion 方程式 です。
- Drift:電界によるキャリア移動
- Diffusion:濃度勾配によるキャリア拡散
これにより、
- なぜ $V_d$ を上げると $I_d$ が増えるのか
- なぜ低電圧で線形領域になるのか
が自然に説明できます。
👉 「輸送方程式が $I_d$ を作る」
📈 V–I特性は「物理の積み重ね」
TCAD では、次の量を同時に観測できます。
- 電位分布
- キャリア密度分布
- 電流密度分布
これらが積み重なった 結果として、
- $V_g$–$I_d$ 特性
- $V_d$–$I_d$ 特性
が 自然に立ち上がります。
🧪 SemiDevKit:教育用 1D TCAD Playground
SemiDevKit では、教育用途に特化した
軽量 1D TCAD 環境 を提供しています。
- Poisson + Drift–Diffusion
- Python 実装
- 数式 ↔ コード ↔ 図が一対一対応
🔗 TCAD トップ
https://samizo-aitl.github.io/SemiDevKit/tcad/
📊 実例①:MOSCAP C–V 特性(Poissonの結果)
酸化膜厚 $t_{ox}$ を変えると、
MOS キャパシタの C–V 特性 がどう変わるか。

👉 電位分布の違いが、容量として観測される
📊 実例②:nMOS $V_g$–$I_d$ 特性
酸化膜厚を変えたときの $V_g$–$I_d$ 特性。

- $t_{ox}$ が薄い → $V_{th}$ 低下
- 同じ $V_g$ で $I_d$ 増加
👉 Poisson → Drift–Diffusion → $I_d$
📊 実例③:nMOS $V_d$–$I_d$ 特性

- 低 $V_d$:線形領域
- 高 $V_d$:飽和領域
👉 輸送方程式が領域分けを自然に生む
🔗 TCADはゴールではない
TCAD は非常に強力ですが、
- 計算コストが高い
- 回路設計には重すぎる
という制約があります。
そこで次に登場するのが BSIM4 です。
TCADで見た物理を、
回路で“即使える形”に圧縮する
これが コンパクトモデル の役割です。
📝 まとめ
- MOSFET の $V$–$I$ 特性は Poisson / Drift–Diffusion の結果
- 電位がチャネルを作り、輸送方程式が電流を決める
- TCAD は「式が現実になる瞬間」を見せる
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🧩 SemiDevKit シリーズは
「TCAD → BSIM → SPICE → 信頼性」へと続きます。