902.【設計】送電線・鉄塔点検ドローンSkyEdge:1フライトV–I予算を切る
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送電線・鉄塔点検ドローン SkyEdge
🔌 1フライトのV–I予算を切る
前記事では、送電線・鉄塔点検ドローン SkyEdge の差別化を
「再現性」「裏取り」「運用」を 数値仕様として固定しました。
本記事では次の一歩として、
1フライトあたりの電圧–電流(V–I)予算を切ります。
これは「飛べるかどうか」ではなく、
点検が成立するかどうか
を決める設計です。
❓ 1. なぜV–I予算を先に切るのか
送電線点検ドローンでは、
- 飛行時間
- 画像品質
- 再現性
- 安全余裕
がすべて 電力制約 に支配されます。
V–I予算を切らずに機能を足すと、
最終的に「全部中途半端な機体」になります。
SkyEdgeでは、
用途(点検)→ 機能 → 電力
の順で設計します。
🗺️ 2. 想定ミッション(前提条件)
- 点検対象:送電線・鉄塔
- 飛行方式:区間ホバリング+低速移動
- 1フライト時間:30分
- 主動作時間:点検 20分
- 余裕:離着陸・回避・帰還マージン含む
🧱 3. 電源アーキテクチャ(全体像)
- 主電源:Li-ion バッテリ
- 補助電源:自己発電+蓄電(待機・準備用)
- 高V系:モータ・ジンバル・駆動
- 低V系:65nm FDSOI(知能・画像)
高V–Iは 0.35µm LDMOS 側で握る
という前提は固定です。
📊 4. サブシステム別 V–I 予算
4.1 推進系(最大消費)
| 項目 | 電圧 | 電流 | 電力 |
|---|---|---|---|
| モータ×4(巡航) | 22–25 V | 6–8 A | 130–180 W |
| モータ×4(ホバー) | 22–25 V | 8–10 A | 180–250 W |
| 瞬間ピーク | 22–25 V | 15 A超 | > 350 W |
ここは削らない
点検品質より「安全」が優先です。
4.2 ジンバル・姿勢制御
| 項目 | 電圧 | 電流 | 電力 |
|---|---|---|---|
| ジンバル | 12 V | 0.3–0.6 A | 4–7 W |
| 姿勢制御補助 | 12 V | 0.2 A | 2–3 W |
4.3 可視CMOS+IR(点検の主役)
| 項目 | 電圧 | 電流 | 電力 |
|---|---|---|---|
| 可視CMOS | 5 V | 0.8–1.2 A | 4–6 W |
| IR(Duty制御) | 5 V | 0.4–0.8 A | 2–4 W |
| 平均(IR含) | — | — | 5–7 W |
IRは常時ONしないのがポイントです。
4.4 65nm FDSOI(知能・画像)
| 状態 | 電力 |
|---|---|
| 点検動作 | 1–2 W |
| 画像処理ピーク | ~3 W |
| スタンバイ | < 100 mW |
4.5 通信・センサその他
| 項目 | 電力 |
|---|---|
| 通信(間欠) | 1–2 W |
| IMU / 距離 | < 0.5 W |
| ロス・マージン | 2–3 W |
⚡ 5. 合計電力(点検時)
平均消費(点検中)
- 推進:200 W
- ジンバル:6 W
- 可視+IR:6 W
- SoC:2 W
- その他:3 W
合計:約 217 W
🔋 6. バッテリ容量の決定
30分フライトの場合
- 必要エネルギー
217 W × 0.5 h ≒ 109 Wh - 安全余裕(20–30%)
→ 130–140 Wh クラス
現実的な重量・サイズに収まります。
♻️ 7. 自己発電のV–I位置づけ(再確認)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 発電能力 | 10–100 mW |
| 飛行寄与 | なし |
| 使用先 | 待機・準備・安全余裕 |
| 効果 | 稼働率向上 / 事故率低下 |
自己発電を飛行電力に混ぜないことで、
- 電源設計が単純になる
- フェイルセーフが明確になる
🎯 8. なぜこのV–I配分が差別化になるのか
- 推進に無理をしない
- 画像・同期・再現性に確実に電力を割く
- 「飛行時間競争」に参加しない
結果として、
点検品質を犠牲にしない電力配分
が成立します。
🧩 9. まとめ
SkyEdge のV–I設計は、
- 長く飛ぶためではなく
- 派手な機能を載せるためでもなく
「同じ条件で、測れる点検を成立させる」
ために切られています。
電力設計は思想を裏切りません。
V–I予算は、その思想を最も正直に表す設計要素です。
※ 本記事は空想設計を含みますが、
数値は実機設計・電源設計の現実レンジを前提に構成しています。