35.【フィジカルAI設計】🤖⚙️ フィジカルAIとは何か|なぜAIは現実世界に出ると壊れるのか
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🤖⚙️ フィジカルAIとは何か
なぜAIは現実世界に出ると壊れるのか
近年、「フィジカルAI」「エンボディドAI」といった言葉が急に増えました。
ロボット、ドローン、音声対話、工場、自動運転——
AIが現実世界に出ていく流れは、もはや止まりません。
しかし同時に、こういう話も大量に見かけます。
- デモでは動いたが、実機では不安定
- LLMをつないだら賢くなったが、挙動が壊れた
- 安全制御をAIに任せたら、逆に危なくなった
この記事では、その原因をはっきりさせます。
🧠 結論(最初に言い切る)
フィジカルAIは賢さの問題ではありません。
それは
時間⏱️・連続状態📈・物理制約⚡(V–I・安全)
を持つ世界にAIを置く、設計の問題です。
この前提を外した瞬間、どんなに高性能なAIでも壊れます。
🔍 ソフトAIとの決定的な違い
まず、ソフトウェア上のAIと、フィジカルAIの違いを整理します。
| 観点 | ソフトAI | フィジカルAI |
|---|---|---|
| 時間 | 止まる・待てる | 止まらない |
| 状態 | 離散・抽象 | 連続・実体 |
| 失敗 | やり直せる | 戻れない |
| 制約 | 論理的 | 物理(V–I・安全) |
チャットAIやゲームAIでは、
- 応答が遅れても「少し待つ」
- 出力が変でも「やり直す」
が許されます。
しかしフィジカルAIでは、
- モータは回り続ける
- 電圧・電流は予算を超えられない
- 一度の誤動作が破損や事故につながる
世界のルールがまったく違うのです。
🤖 なぜ「賢くしたのに壊れる」のか
ここで多くの人が勘違いします。
「AIがまだ賢くないから壊れる」
「学習量が足りないから不安定」
これはほぼ間違いです。
問題は、
AIを“どこに置いたか”
どんなループに入れたか
です。
現実世界では、
- 実時間制御
- 安定性
- 再現性
が最優先されます。
そこに
- 応答時間が揺れる
- 出力が非決定的
- 状態を飛び越える
AIを無造作に接続すると、壊れるのは必然です。
❌ よくある誤解
❌ 誤解①:学習量が足りない
→ 違います
どれだけ学習しても、実時間制御の遅延は消えません。
❌ 誤解②:LLMを直接つなげば賢くなる
→ むしろ壊れます
賢さと制御可能性は別物です。
❌ 誤解③:AIが判断すれば安全になる
→ 逆です
安全は「判断」ではなく「構造」で担保します。
✅ フィジカルAIの定義(設計用語として)
ここで、曖昧な言葉を設計用語に落とします。
フィジカルAIとは、
実時間・連続系・物理制約を持つシステムに
AIを組み込む際のシステム設計問題である。
これは
- AIアルゴリズムの話ではなく
- モデル精度の話でもなく
アーキテクチャの話です。
🧭 このシリーズで扱うこと
このあと、以下を順に扱います。
- なぜ LLM直結が必ず失敗するのか
- フィジカルAIで 壊れない配置とは何か
- PID・FSM・LLMを どう分離すべきか
- 実際に 構造の差が挙動にどう出るか
フィジカルAIを
「流行語」から
再利用可能な設計思想へ
引きずり下ろします。
次回は、
なぜLLM直結は構造的に破綻するのか
を、制御とFSMの視点から分解します。