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SystemDKにおける物理制約の評価手法
Evaluation Methods for Physical Constraints in SystemDK
📘 概要|Overview
SystemDKを用いた実装設計において、物理制約(SI/PI、熱、応力、EMI/EMC)を統合的に設計・最適化するには、
評価系の確立が不可欠です。本章では、以下の評価軸について手法と活用意義を整理します:
- Sパラメータ解析
- インピーダンス解析(PI, PDN)
- FEM(有限要素法)による熱・応力解析
- EMI放射解析とEMC耐性評価
📊 評価マトリクス|Evaluation Matrix
評価軸 | 方法 | 代表ツール | 教育適用の狙い |
---|---|---|---|
Sパラメータ | ネットワークアナライザ測定または電磁界解析 | Keysight ADS, Ansys SIwave | SI評価(反射・クロストーク)・AMS設計への応用 |
PDNインピーダンス | 周波数領域インピーダンス解析 | Sigrity PowerSI, Bode100等 | PI評価・デカップリング配置戦略の検証 |
熱解析 | FEMベースの温度分布・放熱経路可視化 | Ansys Icepak, COMSOL | 熱密度高い領域の検出・配置最適化教育 |
応力解析 | FEMによるCTE不整合・界面応力分析 | Ansys Mechanical, Abaqus | TSV/バンプ間の信頼性リスク設計 |
EMI評価 | 放射ノイズ分布の可視化 | CST Studio, HFSS | ノイズ源・GND戦略の設計教育 |
EMC評価 | 耐性シミュレーション・基準検証 | EMPro, EMC Studio | Chiplet電磁耐性と干渉防止設計 |
🧪 評価手法ごとの補足解説
✅ Sパラメータ解析
- 概要:伝送路やI/Fブロックに対する周波数応答を定量化
- 評価値:S11(反射損失)、S21(透過損失)が主指標
- 応用対象:SerDes、RFブロック、クロック配線など高速I/F
- 例:
S21 @ 1GHz = -2.5 dB(良好透過) S11 @ 1GHz = -12 dB(反射あり改善余地)
- 教育効果:数値結果と物理レイアウト(配線長・Via本数等)の相関を理解させる
✅ PDNインピーダンス解析
- 手法:Z(f)プロファイルでPDN性能を評価
- 目標例:< 50 mΩ(数MHz〜数十MHz帯域)
- 解析ポイント:
- デカップリング配置最適化
- VRM / LDOとのインタラクション
- 電源プレーン形状によるピーク共振の回避
- 教育効果:単なる数値評価に留まらず、「電源設計=システム安定性」であることを学習
✅ 熱FEM解析
- 評価対象:ヒートスプレッダ〜ダイ〜基板までの熱伝播経路
- 重点領域:
- GAAブロック冷却(高消費電力)
- MRAMセル保持(熱による保持劣化防止)
- Hot-spot除去(電源IC周辺など)
- 解析手法:定常熱解析(steady state)+ 過渡解析(transient)を併用
- 教育効果:配置の工夫や材料選択が温度分布にどう影響するかを視覚的に学習
✅ 応力FEM解析
- 主因:材料のCTE不整合(例:Si ↔ Cu, FeMgO ↔ Si)
- 解析対象:
- TSV下層の応力集中
- バンプ・ソルダジョイントのクリープ
- RDL(再配線層)周辺の応力波及
- 評価目的:信頼性(寿命予測、疲労解析)と設計マージンの確立
- 教育効果:「電気特性が良くても応力で壊れる」というマルチフィジクス的思考を身に付ける
✅ EMI / EMC
EMI評価
- 手法:3D放射強度マップ・時系列電磁界シミュレーション
- 応用対象:AMSブロック、GAAクロック、RF回路の干渉検討
- 教育効果:「電磁波は見えないが設計で制御できる」ことを体感
EMC評価
- 目的:外来ノイズに対する回路動作の安定性評価
- 規格:IEC 61000シリーズなど国際規格準拠
- 教育効果:基板/パッケージ/インターポーザの階層的対策を理解する
🎓 教育PoC応用例
- 対象シナリオ:GAA × AMS × MRAM の統合事例
- 応用ポイント:
- Sパラ:高速GAAとAMS間の整合性評価
- 熱解析:高温領域の検出と再配置提案
- 応力解析:TSV/バンプの界面応力分布の定量化
- EMI解析:AMSにおけるRF干渉の遮蔽検討
- 教育的狙い:単一物理現象ではなく複合的な制約統合を体験的に学習させる