7.4 教材事例:SRAMマクロ不良とDR限界
🎯 教育目標
本節では、0.25µmロジックプロセスにおけるSRAMマクロ不良の事例を題材に、
DR(デザインレビュー)の限界とフィードバックの重要性を学ぶ。
開発中の判断が量産段階での不良に直結したケースとして、
「なぜ不良が見抜けなかったのか」「どのDRに何が足りなかったのか」を考察する。
📌 ケース概要:0.25µm Tiサリサイドロジックプロセス
- 使用プロセス:Ti(チタン)サリサイド付き0.25µmロジックプロセス
- SRAM構成:500Kbitマクロを搭載したモジュールでDR合格済み
- 製品展開時:1Mbit構成でビット単位のランダム不良が多発
- 追加設計要素:冗長回路未搭載、シングルビット異常の吸収不能
🧪 不良の技術的背景
要素 |
内容 |
相転移不完全 |
TiサリサイドのC49 → C54相への結晶変化が不完全で高抵抗化 |
熱工程不適合 |
ランプアニール条件が不十分(温度保持時間・勾配) |
設計要因 |
SRAMマクロに冗長ビットなし、1ビット不良でも全体不良判定に |
🧰 実施された対策
- ランプアニール条件の再検討(昇温速度/保持時間を最適化)
- PDKへのフィードバック:C49相残存リスクと条件依存性を明記
- SRAMマクロ仕様変更:ビット冗長構造の追加、Failリカバリ対応
- 暫定設計対応:
- サイドウォールエッチ工程でHaloドーピングとの距離確保
- プロセス変動に強いセルレイアウトへの変更
📚 教材的ポイント
- 一度DRで通過した設計でも、量産後に不具合が顕在化することがある
- DRでのモジュールサイズ限界やプロセスマージンの検証不足が原因の一端
- フィードバックを通じて、PDKと設計ガイドラインを進化させる必要がある
🧭 教育上の狙い
- 「DRでは限界がある」ことを前提に、フィードバック文化と構造的改善の重要性を学ぶ
- 技術者に必要なのは、初期検討の完璧性よりも、不完全性への対処力
- 組織としての“再発防止力”こそが、品質文化を育む鍵となる