# 7.3 ケース②:新規プロセス採用製品の立ち上げ
🎯 教育目標
本節では、新規プロセスを採用した製品立ち上げにおける開発レビュー(DR)の実践構造を解説する。
既存プロセスとは異なり、プロセス開発と製品開発が並行する環境では、
フェーズごとの技術的な不確定要素が多く、DRによるリスク管理と技術検証が極めて重要となる。
🏗️ 前提条件と課題
- 新規プロセス(例:新しいゲート材料、新レイアウトルール、高電圧対応)
- PDK未成熟、ばらつき・信頼性パラメータが不確定
- 試作とプロセス条件の最適化を同時に進める必要あり
- テストチップ(TEG)で得た初期データの信頼性に依存
🔁 各フェーズにおけるDR構造と目的
フェーズ |
DRの種類 |
主な目的・特徴 |
プロセス開発初期 |
プロセス開発DR |
要素技術(ゲート酸化膜、金属層、拡散層など)の確立、信頼性評価、パラメータばらつき確認 |
企画フェーズ |
企画DR |
新プロセスの仕様への適合性検討、設計上の制約整理 |
開発フェーズ |
開発DR |
回路設計の成立性、プロセス変動下でのシミュレーション妥当性、試作評価 |
量産準備 |
量産DR |
工程安定性、歩留まり再現性、テスト方法確立、後工程とのインターフェース整備 |
🧪 実務的な確認項目
- プロセス開発DR:TEGからの閾値ばらつき、寄生抵抗・容量の測定、BTI・HCIなどの初期信頼性
- 開発DR:PDKモデルと実測特性の差異、クロスカップリング、リーク評価
- 量産DR:試作歩留まり分析、レイアウトトポロジーと歩留まり相関、検査マップ分析
🧭 教材的な立ち位置
このケースでは、次の観点から教育的価値が高い:
- 「設計とプロセスが並走する」場合、レビューの役割は単なる確認から“技術統合の場”へと進化する
- DRを通じて得られた課題・失敗の知見は、PDKや設計ガイドラインへの構造的フィードバックにつながる
- 不確実性が高い中での判断は、データだけでなく技術者の暗黙知と経験値も問われる
📝 備考
- 本節の構成は、プロセス開発と製品開発の組織連携の難しさを体感させる教材設計となっている
- 8章以降の戦略設計・プロジェクト管理とも密接に関係するため、連続教材としての応用も可能である