7.2 ケース①:既存プロセスでの製品開発
🎯 本節のねらい
既に量産実績のあるプロセスを用いた新製品開発における、
DR(Design Review)の流れと部門連携を実例形式で理解する。
安定したプロセス条件下であっても、製品固有の要件や設計ミスによって品質問題が発生しうるため、
本節では「形式にとどまらないDRの重要性」を強調する。
🏭 製品開発の前提
- 既存プロセス:例)0.18µm/0.25µm CMOSロジック(PDK確立済)
- 設計資産:プラットフォーム設計、既存IP再利用可
- 開発体制:設計/検査/品質保証/製造が連携しつつ進行
🔁 DRの流れと主目的
フェーズ |
主なDR |
主目的 |
企画フェーズ |
企画DR |
顧客要求の明確化、仕様妥当性、コスト・スケジュール合意 |
設計フェーズ |
開発DR |
設計成立性(回路・レイアウト)、試作後の特性・信頼性確認 |
量産準備 |
量産DR |
歩留まり、検査性、安定量産の確認と出荷判断 |
🔍 代表的な確認項目
◾ 企画DR:
- 製品仕様と顧客要求の合致
- 試作スケジュールと予算
- 特別なプロセス要求の有無(例:低リーク、高耐圧)
◾ 開発DR:
- 回路シミュレーション結果、コーナーケース評価
- レイアウトDRC/LVS、パワーインテグリティ
- ESD設計やアナログ領域の感度評価
◾ 量産DR:
- 初期ロットの歩留まり評価、特性分布
- MAP情報の傾向分析(ウエハばらつき)
- パッケージ適合性とファイナルテスト結果
🧭 教材としてのポイント
- 既存プロセスを使っても、製品に特有なリスクは存在する
- 「PDK通り設計しても不良は出る」現実を理解させる
- DRの目的は形式的承認ではなく、実効的なリスク評価と対応合意にある
📝 備考
- 本節の構成は、比較的経験の浅い学生・新人技術者向けに、DR構造をわかりやすく伝えるための教材設計である。
- 製品によっては、検査DRやパッケージDRが独立して設けられる場合もある。