6.6 信頼性試験と製品出荷:長期安定性の確認と出荷管理
ファイナルテストを通過した製品に対しては、必要に応じて信頼性試験(Reliability Test)が実施される。
これにより、長期使用における動作安定性・耐環境性・寿命予測が確認され、最終的な出荷判定とトレーサビリティ管理が行われる。
🔬 信頼性試験の目的
- 初期不良の排除(バーンインによる早期故障の検出)
- 高温・高湿・温度変動などに対する環境耐性の確認
- 製品寿命モデルの構築と加速劣化試験
- ロット間ばらつきや、実装応力の影響評価
🧪 主な信頼性試験と条件例
試験名 |
内容 |
代表的条件 |
バーンイン(Burn-in) |
高温通電により初期故障を加速 |
125°C / 72時間、Vcc × 1.2倍 など |
温度サイクル試験(TCT) |
-40°C〜125°Cを繰返し印加 |
500〜1000サイクル |
高温保存試験(HTS) |
高温中での静置耐性確認 |
150°C / 1000時間 |
高温高湿試験(HAST) |
高温・高湿・高圧環境での腐食耐性 |
130°C / 85%RH / 96時間 |
はんだ耐熱試験 |
実装工程中の耐熱性評価 |
260°C / 10秒(JEDEC基準) |
📦 出荷判定とトレーサビリティ
- 出荷判定:信頼性試験を含む全工程に合格したロットのみが、正式に市場へ出荷される
- ラベル管理:ロット番号、試験日、試験結果などをラベル・バーコード・データベースで管理
- トレーサビリティ:市場での不具合発生時に、製品のロット・工程履歴・装置履歴まで遡れる体制
⚠️ 教材上の注意点
- 信頼性試験は製品が壊れるまで確認する工程ではなく、「使って壊れないことを示す工程」である
- 市場故障はゼロにはできないが、「なぜ壊れたか」が必ず説明できるよう、履歴管理と因果分析力が必要
- 信頼性試験のフィードバックは、設計条件、パッケージ条件、顧客仕様対応に直結する
🧠 教育的意義
- 信頼性は製品の品質そのものではなく、時間軸を加えた品質である
- 「壊れないように作る」のではなく、「壊れるときの挙動を理解し、壊れにくく設計する」ことが技術者の使命
- 信頼性工学は、物理・化学・統計・現場知識の融合分野であり、実践的な判断力が問われる