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5.5 テスト構造(スキャン、JTAG、BIST)

SoCなどの大規模ICでは、製造後の機能検証・不良検出のために、
テスト容易化設計(DFT: Design for Testability) が不可欠です。

本節では、スキャン構造・JTAG・BISTなどの基本概念と、実設計における導入方法を学びます。


🎯 テスト構造の目的と分類

▶ なぜテストが必要か?

▶ 主な手法と分類

手法 概要
スキャン(Scan) 内部FFを直列につないで状態観測を可能にする
JTAG デバッグ/製造/制御向けの標準的テストアクセスポート
BIST 回路内に自己検査機構を組み込む(Built-In Self Test)

🔁 スキャンチェーンの基礎

▶ 構造イメージ

      DFF         DFF         DFF
   +-------+   +-------+   +-------+
-->|  SI   |-->|  SI   |-->|  SI   |--> 観測
   |   Q   |   |   Q   |   |   Q   |
   +-------+   +-------+   +-------+

▶ モード切替


🔌 JTAG(IEEE 1149.1)

▶ 主な用途

用途 説明
製造テスト 接続不良やショートの確認
デバッグ チップ内の信号制御・観測
書き込み FPGAやCPUのプログラム書き込み(例:SWD)

🧠 BIST(自己検査機構)

▶ 実装例


📐 DFT挿入の設計フロー

  1. 論理合成後のネットリストに対し
  2. スキャンチェーンやテストモジュールを挿入
  3. 配置配線時にもスキャンチェーン考慮
  4. DFTベクタ作成、ATEとの連携

🎓 教育的演習例

演習テーマ 内容
スキャン挿入の可視化 scan_enable の動作を含む回路をシミュレーション
JTAGインターフェース観察 TDI/TDOの波形解析、簡易JTAGモジュール構築
MBISTシナリオ設計 メモリへのパターン書き込み/応答確認を模擬実装

📘 まとめと次章への導入

テスト構造は、製造後の品質保証・量産対応に不可欠な設計要素です。
次章では、SoC完成後のウエハテスト、パッケージング、最終検査工程を学び、製品化への流れを締めくくります。

👉 第6章 テストとパッケージ