第5章:研究開発と産学連携の最前線
5.1 なぜ「連携」が重要なのか
量子半導体の研究開発は、物理・材料・回路・アーキテクチャ・制御・暗号…といった
多分野の融合が不可欠であり、単独の研究機関や企業では完結しません。
そのため、産学官の連携が本質的に重要であり、
量子エコシステムの形成が各国で進められています。
5.2 国際的な研究連携の動き
プロジェクト |
主体 |
特徴 |
Q-NEXT(米) |
DOE |
量子ネットワークと材料科学を結ぶ基盤拠点 |
QuTech(蘭) |
TU Delft / TNO / Intel |
CMOS量子ドットの共開発 |
UK National Quantum Technologies |
英政府 |
産業連携を明示した技術テーマ別連携 |
Quantum Flagship(EU) |
EC |
大学・企業・官庁の共同による研究基盤構築 |
5.3 日本国内の産学連携事例
JSTムーンショット目標6:「量子革新」
- 目標:2030年までに100万量子ビット級の実現に向けた技術基盤構築
- 実施主体:理研、産総研、NII、東大、東工大など
- 民間連携:NEC、日立、NTTなどが研究参加
NEDO/産総研などの材料・システム系プロジェクト
- 量子計測・センサー・材料に重点を置いた応用研究
- 研究→産業展開を意識したアプローチが増加傾向
5.4 ファウンドリ型研究連携の重要性
- 製造技術の共有(例:極低温CMOS製造、ジョセフソン接合工程)
- プロトタイピング・テスト評価の共通基盤(Cryo-CMOSテストベッドなど)
- 日本では ファウンドリ連携=TSMC依存構造からの自立 にも関わる
5.5 人材育成と教育プログラム
- 各国で「量子人材育成」は重点施策
- 学部〜博士、企業研修まで多層的教育が進行中
- 例:
- IBM Quantum Education(クラウドでの量子体験)
- Qiskit/Cirqなどのオープンツールの普及
- 日本でも東大Q-LEAPプログラムなどが進行
5.6 本章まとめ
- 量子研究は「産業界・学界・政府」が連携して初めて前に進む
- 国際連携と人材育成は、長期的競争力に直結する
- 日本の課題は「製造インフラと実装力」—— これを補完する産学官モデルが鍵
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