本節では、強化学習(RL)と従来の古典制御(PIDなど)を比較し、
それぞれの特徴・利点・課題を整理します。さらに、両者の統合によるハイブリッド制御の可能性についても考察します。
項目 | 古典制御(例:PID) | 強化学習(RL) |
---|---|---|
モデル必要性 | 要求される(伝達関数、状態空間など) | 不要(モデルフリー) |
実装難易度 | 比較的簡単 | 訓練環境構築と調整が必要 |
安定性解析 | 理論的に保証可 | 保証困難(経験ベース) |
外乱・ノイズへの耐性 | 設計次第(ロバスト設計) | 適応的に対応可能 |
リアルタイム性 | 高い | 推論は速いが学習は重い |
利用場面 | 既知モデル・定常系 | 非線形・複雑・未知環境系 |
戦略 | 説明 |
---|---|
PID + RL補正 | PIDベースの安定性を保ちつつ、RLで微調整や適応性を付加 |
RLによるパラメータチューニング | PIDゲインなどをRLで最適化(例:NN-PID強化) |
状況依存スイッチング | 状況に応じてRL制御とPID制御を切り替え |
マルチモーダル制御 | RLが上位意思決定を担い、PID等が下位制御を行う(階層構造) |
本教材の最終章で取り扱う「AITL構想」では、次の三層で制御を統合します:
これにより、ルール・反射・学習・推論を併せ持つ、次世代型制御アーキテクチャを実現します。
強化学習と古典制御は、目的やシステム特性に応じて使い分け・組み合わせが重要です。
ハイブリッド戦略により、双方の強みを活かした柔軟で堅牢な制御が可能になります。
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